自分の子供の成長を見守るのってすごく幸せですよね。
全てを注いで育ててきた子供がどんどん大きくなり、両親どちらかの顔に似てくる…。似ていれば似ているほど、さらに愛情も湧いてきて、親子の絆が深まりますよね。
しかし、もしどちらにも似ていない、全く違う顔に成長してしまった場合はどうなるでしょうか。
ある程度の場合は「まぁそういうこともあるよね…」で済まされるかもしれませんが、あまりにも顔が違い過ぎる場合には「DNA鑑定しよう!」という結果になってしまうかもしれません。
たしかにDNA鑑定は、警察の捜査などにも用いられるほど正確性が高いです。しかし、そんなDNA鑑定も100%確実というわけではなく、たとえ自分の実子であったとしても「父親のDNAは含まれていません」という異父判定が出てしまうことがあるそうなのです。
今回はなぜこのようなことが起こってしまうのか、詳しく紹介していきたいと思います。
原因は『マイクロキメリズム』と呼ばれる現象
なぜ異父判定が出てしまうのか、それは『マイクロキメリズム』という現象が原因となっています。
マイクロキメリズムは、自分のものではない、他社の細胞が自分の体に定着してしまう現象です。
あまり馴染みのない言葉で、世間での認知度も低いですが、誰にでも起きる可能性があるので、あらかじめ知っていないと、冒頭で述べたような事態に陥ったときに困ってしまうことになるでしょう。
具体的な例
「自分のものではない、他社の細胞が自分の体に定着してしまう現象」とは一体どのようなものなのか、具体的な例を挙げていきたいと思います。
- 母親の細胞が体から見つかる(妊娠)
- 自分の細胞が母親の体から見つかる(妊娠)
- 兄弟姉妹の細胞が自分の体から見つかる(妊娠)
- 赤の他人の細胞が自分の体から見つかる(血液、臓器移植)
ほとんどのパターンが、母親のお腹の中にいる胎児時代(妊娠時)に起きてしまうものです。
いかなる場合でも、母親の細胞は多少なり胎児の体に入り込むものですが、通常は成長するとともに外敵と判断されて、免疫系に排除されていきます。それが起こらずに共存し続けた結果がマイクロキメリズムになります。
兄弟姉妹のパターンについては、流産してしまった子であっても細胞が体内に残ってしまうことがあるらしく、流産の過去を知らなかった場合には理由が分からずに困り果ててしまうことになります。
また、輸血による血液の移植や臓器移植を受けると、かなり大きい単位で赤の他人の細胞が自分の体へと入り込むため、マイクロキメリズムになってしまいます。
身体への影響
このマイクロキメリズムの体への影響は大きいものではないです。しかし、全くないわけではなく、良い面も悪い面も併せ持っています。
良い面
胎児の頃や幼児期に何かしらの要因でケガや病気にかかってしまった場合、本来はまだ未熟な体の細胞のみで皮膚や臓器の修復をするのですが、マイクロキメリズムによって成長しきった母親の細胞が大量に体内に入っていると、非常に速いスピードで修復を行えることがあるのです。
悪い面
そもそも、マイクロキメリズムによって入り込んだ細胞は、たとえ親子であっても自分以外のものなので、体が外敵だと判断してしまうことがあります。
これによって、胎児が自己免疫疾患を引き起こしてしまい、深刻なダメージを受けてしまうこともあります。
まだ謎が多い
実際に見つかっていて、どのような影響があるか、実例まで出ているマイクロキメリズムですが、未だに詳しい研究が進んでいないため、まだまだ謎が多いです。
- 成人するまで体内で共存できていて、影響がなかったのに、なぜ突然自己免疫疾患が反応し始めてしまったのか。
- 母親由来の細胞は明らかに高齢化しているはずなので、発がんリスクが上がってしまうのではないか。
など、様々な疑問が浮かびますが、真相は分かりません。
他にも、胎児の細胞が母親に残ってしまった場合、膠原病や乳がんにかかるリスクが大きくなるのではないかという疑いも出てきています。
DNA検査が通用しなかったケース
冒頭で述べた「自分の子のはずなのにDNA検査が一致しないケース」はアメリカのワシントン州で起きました。
このケースは非常に珍しく、父親が生まれてくる際に、本来は双子で産まれてくるはずだった赤ちゃんが片方に吸収されてしまう『バニシング・ツイン』という現象が起きてしまいました。
これによって、この世に存在していない兄弟の遺伝子情報を持った細胞が父親に入り込み、マイクロキメリズムによって大人になるまで共存し続け、結果的に実子へと引き継がれてしまったのです。
実に恐ろしい現象ですが、真実が判明しただけ、まだよかったのかもしれません。下手をすると夫婦で裁判沙汰になっていたでしょう。
後書き
いかがでしたでしょうか。
このように、マイクロキメリズムは色々と厄介な問題を多く引き起こします。もちろん、良い面も持っているんですけどね。
「わざわざ検査をしていないから発見されていないだけで、本当はほとんどの人がこのマイクロキメリズムになってしまっているのではないか」という意見もあるので、一度あなたも検査してみてはいかがでしょうか。