土用の丑の日によく食べられている『うなぎ(鰻)』。あなたはどのような料理で食べていますか?
お店に行くと、うな重やうな丼がメジャーですが、もう一つ有名な料理がありますね。それが『ひつまぶし』です。
うな重は重箱に入ったご飯とうなぎ、うな丼は丼ぶりに入ったご飯とうなぎ、ということで直感的に意味がわかるのですが、ひつまぶしだけはなぜ「ひつまぶし」と呼ばれているのか全く予想ができないですよね。
今回はそんなひつまぶしの名前の由来と発祥について紹介していきたいと思います。
『ひつまぶし』はどのような料理か
そもしも、ひつまぶしがどのような料理かわからないという人のために紹介しておきたいと思います。
かば焼き(蒲焼き)にしたうなぎの身を細く切り分けた上で、おひつ(お櫃)などの容器に敷き詰めたご飯にまぶします。
食べる際には、それぞれが自分で茶碗によそうのが基本的なスタイルとなっています。
そのままうな重やうな丼のような「うなぎご飯」として味わうこともできますが、「わさび(山葵)」「のり(海苔)」「ねぎ」などの薬味を加えて、出汁やお茶をかけて食べるのが一般的です。
正式な食べ方
ひつまぶしという料理は各々が自由に食べてもいいのですが、実は正しい食べ方も存在します。
それは4回に分けて食べる方法です。この食べ方は、ひつまぶしの全てを味わうことができます。
- おひつに入ったひつまぶしをしゃもじで十字に切って4等分にします。
- 1回目は4分の1をそのまま食べます。
- 2回目はねぎ、わさび、のりなどの薬味を乗せて味わいます。
- 3回目は2回目と同様に薬味を乗せて、そこに出汁やお茶をかけて楽しみます。
- 最後の4回目は一番気に入った食べ方をリピートしましょう。
『ひつまぶし』の発祥
ひつまぶしという料理の発祥、誕生は一つに断定されておらず、2つの説があります。
賄いから生まれた説
一つは料理屋でかば焼きとして出せないような大きさのうなぎであったり、質の悪いうなぎを細かく刻んで、従業員へのまかない(賄い)として出していたという説があります。
ひつまぶしに出汁やお茶をかける文化も、この賄い料理としてサッと食べられるようにしたという説と、宴会料理の締めしとしてさっぱり食べやすいようにお茶漬けにしたという説があります。
出前から生まれた説
二つ目のとして、出前として頼まれていたうな丼を「大勢で食べるのには適さない」として、皆が公平にうなぎを食べられるようにかば焼きではなく、細かく刻んだものが提供されたそうです。
さらに、出前で使われていた陶器の器は割れてしまう事が多かったため、代わりとして割れる心配のないおひつを使うようになりました。
これがひつまぶし誕生のきっかけだったとも言われています。
『ひつまぶし』という名前の由来
もしかすると、勘のいい方なら上記の文章を読んでいて気付いたかもしれませんが、『ひつまぶし』という名称は「おひつのご飯にうなぎをまぶす」という部分からきています。
しかし、これもはっきりと断定されたものではありません。
これ以外にも、関西地方では昔、うな丼のことを「まむし」や「まぶし」と呼んでいたため、「おひつに入れたまぶし」からきているという説があります。
※この「まむし」や「まぶし」という呼び方自体にも、「まぶす」以外に「間蒸し」「飯(まま)蒸し」「鰻飯(まんめし)」等が変形したものではないかという様々な説があります。
商標登録されそうになった過去
まず、『ひつまぶし』という名称について、「あつた蓬菜軒」という老舗がこれを商標登録しようとした過去を持っています。
しかし、これについては最終的に否決となってしまいました。「ひつまぶし」という文字を一部に含む商標を複数の権利者が登録していることもあり、「これは商標として機能しない」と登録を拒絶されてしまいました。さらに、後の審決への不服申し立てによる再審でも同様に拒絶されてしまった過去があります。
このことから、「ひつまぶし」という名称はうなぎ料理を提供している店舗における料理名として一般的に使用されていということが確定的になったので、どの店舗でも自由に「ひつまぶし」という名称の料理を提供できるようになりました。
後書き
以上が、ひつまぶしという名前の由来と発祥となります。
「名古屋名物のひつまぶし」と言われていますが、名古屋の人でもこのことを知っている人はあまりいないのではないでしょうか。
意外なことにどちらに関しても一つに断定されてはいませんが、そういうところもまた『ひつまぶし』という料理の魅力となっているのかもしれませんね。