「世界一のカルデラを持つ」ということで学校教育で習う、熊本県の『阿蘇山』。旅行などで一度は訪れたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
現在、日本一の標高の高さを誇る山は『富士山』ですが、それは間違っているかもしれないのです。それどころか「阿蘇山は世界一の標高の高さを誇るかもしれない」という噂すらあります。
今回は、そんな阿蘇山について詳しく書いていきたいと思います。
学校で習った「世界一のカルデラ」は間違っている
学校教育で「世界一のカルデラを持つ」と習うことが多い阿蘇山ですが、本当に世界一なのでしょうか。
実は私達が学校で習ったことは間違っていて、本当の「世界最大のカルデラ」はインドネシアの『トバカルデラ (長径約100km、短径約30km) 』になります。
「なんだ世界一じゃないのか…。じゃあ阿蘇山は日本一なんだね」と言われるとそういうわけでもなく、日本最大のカルデラは北海道にある『屈斜路カルデラ(長径約26km、短径約20km)』であり、阿蘇カルデラ(長径約25km、短径約18km)はそれに次いで国内第二位の大きさのカルデラとなります。
あまり名前を聞かないカルデラですが、僅かな差で阿蘇山は負けてしまっています。つまり、阿蘇山は「日本最大級」のカルデアを持つ山です。
なぜこのような勘違いが起きてしまっているかというと、1981年に『阿蘇火山 世界一のカルデラ』という本が出版されていたり「大きなカルデラ内に国道や電車が通っていて生活している人がいるという点では世界的に見ても非常に珍しく、阿蘇山は世界一だ」という点が間違って広まった可能性が高いようです。
今の阿蘇山は本来の姿ではない
カルデラの大きさで国内二位を誇っている阿蘇山ですが、高さはどうでしょうか。現在の国内標高ランキングは以下のようになっています。
- 富士山(3,776m)
- 北岳(3,193m)
- 奥穂高岳(3,190m)
- 間ノ岳(奥穂高岳と同率3位)
- 槍ヶ岳(3,180m)
この後もずっとランキングは続くのですが、阿蘇山はいつまで経っても出てきません。それもそのはず、阿蘇山は一番高い『高岳』の部分でも標高1592mしかないからです。
阿蘇山の標高がここまで低い理由はその作りにあります。非常になだらかで、小さな山が集まって阿蘇山となっているため、標高がそこまで高くならないのです。
しかし、これらの標高ランキングは現在の姿で作られたものであり、大昔の姿ではどうでしょうか。山は太古の時代から噴火を何度も繰り返して現在の形となっていますが、本来の大きさはそのカルデラに比例すると言われています。
「カルデラの大きさから阿蘇山の本来の高さを推測した」という火山学者の話では、本来の標高は少なくとも9,000~12,000mにもなるというのです。これは日本一の富士山どころか世界一の標高を誇るヒマラヤ山脈の8,848mにも負けない高さなので、ほぼ世界一と言えるかもしれません。
しかし「カルデラの大きさと標高は比例する」という考え方で言うと、忘れてはいけないのが世界最大のトバカルデラ(インドネシア)と日本最大の屈斜路カルデラ(北海道)です。これらのカルデラの方が大きい分、本来の標高も阿蘇山より高くなりそうなので、実際には本来の姿でも世界一の標高の高さにはなれそうにないですね。
阿蘇山は噴火がすごい
標高の高さやカルデラの大きさではあと一歩だった阿蘇山ですが、噴火が非常に強力だということも有名です。2016年の『熊本大地震』では、地震と連動して阿蘇山が噴火してしまわないかヒヤヒヤしました。
九州では鹿児島の『桜島(姶良カルデラ)』と並んで恐れられていて、フルパワーで噴火した場合、火砕流などの影響で九州は全滅。それどころか西日本全体が大量の火山灰で覆われてしまい、人が生活できなくなると言われています。
そんな阿蘇山の有史以来の活動は以下の通りとなります。
1274年(文永11年) 噴石、降灰のため田畑荒廃。
1558年から1559年 (永禄元年から2年)新火口生成。
1772年から1780年 (安永年間)降灰のため農作物の被害。
1816年(文化13年) 水蒸気噴火。噴石で死亡1名
1854年(安政元年) 2月26日の噴火により、参拝者3人死亡。
1872年(明治5年) 12月30日の噴火により。硫黄採掘者が数名死亡。
1884年(明治17年) 中央火口の最北部に新火口生成。
1929年(昭和4年) 降灰多量、農作物、牛馬被害。
1930年(昭和7年) 空振のため阿蘇山測候所窓ガラス破損。12月18日火口付近で負傷者13名。
1933年(昭和8年) 第二、第一火口の活動活発化。直径1m近い赤熱噴石が高さ、水平距離とも数百m飛散。
1953年(昭和28年) 第一火口から噴出した噴石で観光客死者6名、負傷者90余名。
1958年(昭和33年) 第一火口からの噴出物で山腹一帯に多量の降灰砂、死者12名、負傷者28名。
1979年(昭和54年) 楢尾岳周辺で死者3名、重傷2名、軽傷9名、火口東駅舎被害。
1989年(平成元年) 降灰多量で農作物に被害。
2007年(平成19年) 噴火警戒レベル1
2011年(平成23年) 東北地方太平洋沖地震以降、火口北西側10km付近の地震活動が一時的に増加。
2014年(平成26年) 噴火警戒レベル2
2015年(平成27年)9月14日 9時43分、中岳第一火口より噴火。噴石及び噴煙(上空2,000m)の発出が確認されたため噴火警戒レベル3。
引用: Wikipedia
近年ではあまり噴火が警戒されていないですが、南海トラフ地震などの大地震が日本を襲ったときには、連動して噴火してしまう可能性も大いにあります。
そして、このように噴火の歴史がある阿蘇山には、いつでも火山の状態が確認できるようにRKK(熊本)放送の定点ライブカメラが設置されています。YouTubeの生配信で誰でも見れるようになっているので、心配だったり興味がある方は是非見てみて下さい。
また、阿蘇山は噴火の可能性がある活動状態に入ると入山規制がかかります。数年前にも規制がかかっている時期がありましたよね。
現在の規制レベルは下記の特別サイトから確認できるので、旅行などで阿蘇山に訪れる予定がある場合は事前に確認するようにしましょう。
阿蘇火山火口規制情報:http://www.aso.ne.jp/~volcano/
後書き
結局、阿蘇山は標高とカルデラの大きさのどちらをとっても、世界一でもなければ日本一でもありませんでした。
しかし、日本最大である屈斜路カルデラの位置(北海道)と僅かしかない大きさの差を考えると「阿蘇山は噴火の規模や被害で考えると日本一」と言えてしまうかもしれません。これからも大噴火しないことを祈るばかりです。
そして、私達日本人は阿蘇山の危険性を忘れないようにして生活を送らないといけないですね。