日本の食卓では魚がよく食されています。
季節ごとに旬の魚が出回っていますが、その中でも秋の『サンマ(秋刀魚)』は定番ですよね。
秋になった途端に様々なスーパーでサンマの安売りが始まりますが、毎回購入の度にどのサンマにしようか吟味してしまいます。
先日も「さて、今日もどれにしようか迷うなぁ」とサンマを見つめていたのですが、その時にあることに気付きました。
サンマのお腹に無数の穴が開いている…
今までも穴が空いているのは何度か目にしていましたが「漁や市場で何か器具を刺して扱っているのかな」と勝手に思っていました。
しかし、今回見かけた無数の穴はあまりにも不自然過ぎて「これはそういうので空いた穴じゃないな」と気付きました。ではこの穴は一体何なのでしょうか。
今回はこのサンマにお腹に空いた穴について書いていきたいと思います。
サンマのお腹に空いた穴の正体
サンマのお腹にはまるでパンチで開けたような綺麗な穴が空いていました。それゆえに何かしらの器具で空いてしまったものだと勘違いしてしまいましたが、実は全く別のものが原因でした。
あの穴はなんと、寄生虫『サンマウオジラミ』が寄生していた傷跡だったのです。名前がまた「サンマに寄生するためだけに生まれてきました」って感じでダブルで驚いてしまいますよね。
このサンマウオジラミは美味しそうなサンマに穴をあけてしまい、見た目にこそ大きな影響を与えてしまいますが、食べてしまっても人体には何も悪い影響はないのであまり心配しなくても大丈夫なんだそうです。
しかし寄生虫というだけあって、サンマウオジラミはサンマの血液や栄養を吸い取ってしまいます。このせいで、わずかながらもサンマの肥満度に影響が出てしまうらしいです。
太ってて脂が乗ったサンマを食べたい場合は、サンマウオジラミの穴が空いている個体はできるだけ避けた方がよさそうですね。
どうして穴が空くの?
アニサキスなどの有名な寄生虫の多くは宿主の体内に入り込む内部寄生虫ですが、サンマウオジラミは体表面に張り付く外部寄生虫です。
なぜサンマに穴が空いてしまうかというと、栄養を吸い取るためにサンマの表皮と粘膜質を溶かして表面に張り付いているためです。ちなみにサンマウオジラミは私達が食べる部分である筋肉までは侵入しません。
※それとこれは確率は低いのですが、尖っているサンマの口がお互いに刺さってしまって穴が空くこともあるそうです。この場合はパンチで空けたような綺麗な穴にはなりません。
穴だけが空いている理由
スーパーのサンマを見てもサンマウオジラミがいなくなっていて穴だけが残っている理由は、水揚げされてからスーパーに並ぶまでの工程でほとんど取り除かれてしまうからです。
たしかに穴は何回も見たことがありますが、サンマウオジラミ自体は一回も見たことありませんよね。もし張り付いているサンマを見付けられた人は運がいいかもしれません。
サンマは海で元気に泳いでいる時点ではたくさんのサンマウオジラミに寄生されてしまっているのですが、漁や市場での扱い、スーパーでの検品とパッキング作業でほとんど取り除かれてしまうそうです。サンマウオジラミは簡単に取り除くことができるので、魚体同士の擦れでもかなりの量のが落ちていると思われます。
サンマには他にもたくさんの寄生虫が
そして、これだけではまだまだ安心できません。
サンマにはサンマウオジラミ以外にもたくさんの寄生虫が同居しています。
アニサキス
あの有名な『アニサキス』です。
体長は2~3cmで白く細長い体を持ち、意外と硬いです。宿主の内臓に寄生していますが、宿主が死んでしまい鮮度が落ちてくると筋肉の方へと移動してしまいます。
うっかり食べてしまうと胃の中を傷付けて激痛を引き起こす『アニサキス症』になってしまうので注意が必要です。サンマの寄生虫の中では唯一害がある寄生虫かもしれません。
アニサキスは熱に弱いので、火を通す料理であれば何も意識しなくても自然と死滅します。
生の刺身やお寿司を食べる場合には一度冷凍(家庭用冷凍庫で48時間以上)してしまうか、細かい飾り包丁などで少し傷をつけてしまえばアニサキスは生きることができません。
どうしてもこれらの対処ができない場合には、食べる際に何回もよく噛むと傷をつけることができるので対策になります。
ペンネラ(サンマヒジキムシ)
サンマに何か黒い紐のようなものが付いていたら、それは『ペンネラ』という寄生虫です。
体長は7~10cmで分類的にはエビやカニの仲間らしいのですが、それらとは程遠いひじきのような見た目をしています。
サンマに錨(イカリ)のようになっている体の一部を突き刺し、簡単には抜けないようにして寄生しています。
ペンネラは仮に食べてしまっても全くの無害なので、無理に取り除こうとしなくても大丈夫です。
ラジノリンクス
『ラジノリンクス』という寄生虫はサンマのはらわたを好んで食べる人なら一度は見たことがあると思います。
体長2~3cmで、赤もしくはオレンジのような色をしています。内臓に寄生していますが、肛門部分から出てきたリすることもあります。
はらわたを食べれていれば100%一緒に食べていると思ってもいい寄生虫ですが、人体には全くの無害なのでこれからも安心してはらわたを楽しんで下さい。
寄生虫がいた場合の対処法
大抵の寄生虫はお店に並べられる際に取り除かれるのですが、購入後に寄生虫を見付けてしまった場合はピンセットで取り除いてしまいましょう。
肝心なのは目に見えない内部寄生虫ですが、こちらは一度冷凍(家庭用冷凍庫で48時間以上)をすることで確実に死滅させることができます。
※完全に火を通す料理で食べるのであれば、冷凍をする必要もありません。
最後に
スーパーに並んでいたサンマのお腹に空いている穴の正体はサンマジラミウオという寄生虫の傷跡でした。
サンマにはその他にもたくさんの寄生虫が寄生しているようですが、家庭では基本的に加熱して食べる魚なので何も心配せずに調理していれば寄生虫を心配する必要はなさそうですね。