「贈り物のカニが届いたよ~!」と言われたとき、あなたは何のカニを思い浮かべますか?
食用でよく提供されるカニといえば『タラバガニ』ですが、最近世間ではこのタラバガニが「クモと同じなんじゃないか」という噂が流れているようです。
この噂は本当なのか?詳しく紹介していきたいと思います。
タラバガニはクモの仲間ではない
生物学的に比べてみる
それではタラバガニを生物学的な分類で見ていきたいと思います。
- 節足動物門
- 甲殻亜門
- 軟甲綱(エビ綱)
- 十脚目(エビ目)
- 異尾下目(ヤドカリ下目)
- タラバガニ科
- タラバガニ属
これと比べて、クモ類は以下のようになります。
- 節足動物門
- 鋏角亜門
- クモ綱
- クモ目
共通しているのは出だしの「節足動物門」までで、それ以降は全く別となっていることから全く関係のない生物だということがわかります。
ちなみに、この「節足動物門」という共通点も、地球上の生物の75%がこれに分類されているため、とても共通点と呼べるようなものではありません。
デマが生まれた理由
結局、他に色々と調べてはみましたが、タラバガニとクモ類の共通点は何も見つかりませんでした。なので「タラバガニがクモと同じなんじゃないか」という噂はハッキリとデマだと断言できます。
しかし、たしかにクモとカニが同じだと勘違いしてしまった人の気持ちも少しわかるような気がするんですよね。
「大きな胴体があって、そこから放射状にたくさんの脚が伸びている」このような見た目、体の造りの点だけでいえば、カニとクモは共通しています。
このようなイメージを持った人が、つい知ったかぶりで嘘をついてしまい、それが一人歩きした結果、大きく広まってしまったのではないでしょうか。
…でも、これだと「タラバガニ」に限定する意味ないですからね。やっぱりサッパリ意味がわかりません。
カブトガニが原因かも
タラバガニとは全く関係がないですが、これが勘違いの原因なんじゃないか?というものがあります。
それは「カブトガニ」という存在です。
太古から存在するカニとして有名ですが、実はこのカブトガニもカニではなかったのです。では、生物学的には何に分類されているのか、見ていきましょう。
- 節足動物門
- 鋏角亜門
- 節口綱(腿口綱)
- カブトガニ目(剣尾目)
- カブトガニ亜目
- カブトガニ科
ここで何かに気付いた人もいるかもしれませんが、次にもう一度クモ類を見ていきましょう。
- 節足動物門
- 鋏角亜門
- クモ綱
- クモ目
なんと、同じ「鋏角亜門」なのです。タラバガニは少なくとも、他のカニと同じく「甲殻亜門」だったのですが、カブトガニの場合はこの時点でカニではなくなっていて、クモ類やサソリ類と同じである「鋏角亜門」に分類されているのです。つまり「カブトガニはカニよりもクモに近い」という事実があるのです。
大昔、カブトガニが地球上に出現した頃、ほぼ同時にクモ類も地球上に現れ始めました。このことから、この2種は同じ水生鋏角類から枝分かれし、水中に残った方がカブトガニに、陸へ上がった方がクモ類などに派生していったのではないかと考えられています。
「カブトガニ」のことなので全く関係ないように感じますが、同じ「カニ」という名前が付いているので、この事実を知った方が少し勘違いして今回のようなデマが生まれたのかもしれません。
タラバガニは実はヤドカリの仲間
脚の数が違う
クモではなかったタラバガニですが、実はカニの仲間でもなくて、異尾下目(ヤドカリ下目)と呼ばれる、本来カニ類が分類されるべき十脚目とは違う目に分類されています。
※タラバガニは脚が8本ですが、他のカニは脚が10本あるのが普通です。
なので、ズワイガニ(越前ガニ)や毛ガニなどと並んで食用カニの代表格として扱われてはいますが、生物学的に見た場合、タラバガニだけはヤドカリの仲間となるのです。
裏側から見た時に左右対称ではない
もうひとつ、カニ類の特徴として「裏から見た時に左右対称である」という点が存在します。
しかし、タラバガニを裏返して見てみると、このような見た目になっているようです。
少しわかりづらいですが、腹部の模様が全く左右対称になっていません。
この特徴から考えても、やはりタラバガニはカニの仲間ではないのです。どちらかというと、クモでなかったことよりもカニでなかったことの方が衝撃的かもしれません。
これらのことから「タラバガニがカニよりもヤドカリに近い」ということが証明されています。
後書き
以上が、「タラバガニがクモと同じなんじゃないか」というデマに対しての答えとなります。
このような事実は全くないですが「カブトガニがカニよりもクモに近い」という事実から、このようなデマが生まれたことが予想できましたね。
また、それに加えて「タラバガニはカニよりもヤドカリに近い」という衝撃の真実もわかりました。
このような考えは、あくまで生物学的な分類で見た場合の話なので、あまり気にしなくてもいいことだとは思いますが、知っていると色々と話のタネになりそうですね。