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ハクキンカイロや染み抜きに使われる『ベンジン』の危険性

豆知識
この記事は約6分で読めます。

冬になって寒さが増してくると、大活躍するホッカイロ。とても暖かいですよね。

しかし、それ以上に強力な暖かさを誇る、昔ながらのカイロが存在することをご存知でしょうか?

その名は『ハクキンカイロ』といいます。

ハクキンカイロの歴史はとても古く、大正時代から日本の人々に愛されてきました。

特徴はなんと言ってもその強力な熱量です。なんと使い捨てカイロの13倍もの熱量になります。これは未だに使われ続けている理由もわかります。

さらに、このハクキンカイロ、現在普及している多くの使い捨てカイロとは違い、消耗品を交換し、燃料を補給し続ければ永続的に使用することができ、お財布にも優しいのです。今回はこのハクキンカイロの燃料として使われている『ベンジン』の危険性について書いていきたい思います。

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『ベンジン』について

ベンジンはハクキンカイロの燃料以外にも、衣類品の染み抜きアイテムとして使われることがあります。「大切な服が汚れちゃったけど、洗濯や洗剤に弱い素材なんだよね…」そんな時にこのベンジンを使えば、汚れだけを溶かし出して綺麗にしてくれるので、主婦が使う機会も多かったそうです。

※ちなみに、油性の汚れしか落ちません。

色々と使い道があるベンジンですが、どうやって作られているかというと原料である石油を精製して作られています。ライターオイルやガソリンと同じですね。石油からはまず、灯油や軽油、ガソリンなどガソリンスタンドに並ぶものが精製されて、残ったものからベンジンなどを精製します。

原料がガソリンと同じなので共通点が多く、ニオイはマジックペンのような軽いシンナー臭、沸点が低く、非常に揮発性が高いという特徴を持っています。そのため、ハクキンカイロを使用していると、ニオイに困ることも多いそうです。

一体何が危険なの?

最近、そんなベンジンを危険視する声が上がってきています。一体何が危険なのでしょうか?

まずはベンジンの容器を確認してみると、こんな注意書きが載っていました。細かい違いはあると思いますが、市販のベンジンには大体このような記載があるそうです。

「本商品は【有害物質】なので皮膚についたり、目に入ると危険です。過度の吸引も体に危険を及ぼします。」

かなりハッキリと「有害物質」って書いてあるんですね…。特に過度の吸引については、ベンジン自体が「揮発性が高い」という特徴を持っているため、少し心配になります。

ベンジンを体内に取り込んでしまう2つのパターン

注意書きにも記載されている通り、ベンジンのような有機溶剤が体内に入ってしまうパターンは下記の2通りとなります。

  • 皮膚からの浸透
  • 吸引で肺から取り込んでしまう

ベンジンは体内に取り込まれてしまうと、血液と一緒に身体中を循環してしまいます。また、ベンジンは油に溶けやすいので、神経や脳と結合したり臓器や脂肪に蓄積されてしまいやすいです。

少量であれば腎臓を通して尿と一緒に排泄されますが、体内への蓄積が許容量を超えてしまうと中毒障害が表れ始めます。

では、具体的にはどのような症状が出るのでしょうか。

ベンジン急性中毒

短時間にたくさんのベンジンを吸引してしまったり、皮膚に大量のベンジンがかかってしまった場合、下記のような急性中毒の症状が表れます。

  • 皮膚、呼吸器の炎症
  • 吐き気、頭痛
  • 精神の興奮、多幸感
  • めまい、昏睡、痙攣
  • 呼吸不全
  • 意識障害
  • 心室性不正脈

皮膚にかかった場合では、体内に浸透するほど放置しない限りは皮膚の炎症くらいで済むのですが、過度の吸引をしてしまった場合は直接体内にベンジンが入ってしまうので特にひどい症状が表れやすいです。上記の全てが起きるわけではないですが、吸引量が多くなるほど重篤な症状が表れます。

急性中毒になってしまった場合の対処法

部屋の換気をして綺麗な空気に入れ替えたり、戸外の新鮮な空気を吸いましょう。

ベンジン慢性中毒

毎日のようにベンジンを吸引し続けたり、皮膚にかかる機会が多い状況にあると、体内に大量のベンジンが蓄積されてしまい、次のような慢性中毒の症状が表れます。

※「100~500ppmの濃度のものを1日4~5時間吸入」が慢性中毒になる目安です。

  • 急性中毒の症状全て
  • 食欲不振
  • 倦怠感
  • 不眠症
  • 造血機能低下による貧血
  • 白血球の減少
  • 再生不良性貧血
  • 出血
  • 心臓、肝臓、腎臓の脂肪変性
  • 筋肉委縮、歩行困難
  • 脳変性による人格障害
  • 発がんの危険性
  • 生殖機能へのダメージ

実に様々な症状が表れるようですが、どれも恐ろしいものばかりですね。最終的には死に至る場合もあります。仕事で毎日ベンジンを扱うのに、保護マスクなどを着用していなかったために慢性中毒になってしまうという場合が多いそうです。

※労働衛生上でのベンジンの許容濃度は10ppmとなっています。

慢性中毒になってしまった場合の対処法

治療機関で輸血、止血剤、造血薬の投与などの再生不良性貧血に対する治療を受けましょう。

ベンジン中毒の歴史:ヘップサンダル事件

第二次世界大戦後の1950年、国内のヘップサンダル製造工場でサンダルの底を貼るゴム糊の溶剤としてベンゼンが使用されていました。このベンゼンが空気中へ揮発し、作業中の従業員の体内へ蓄積されて再生不良性貧血や白血病が多発、亡くなってしまった従業員も多かったそうです。

このような『ヘップサンダル事件』などをきっかけに、1972年にようやくベンゼンに対する危険性が認識され、使用の禁止や規則などが制定されました。

※ヘップサンダルは、踵にベルトがなく、つま先が空いているミュールタイプのサンダルです。オードリー・ヘップバーンが映画内で履いていたことが名称の由来で、『ヘップバーン・サンダル』の略称です。

揮発性の高さから引火の可能性も

ベンジンには中毒を起こす以外にも、ついつい見落としがちな危険性があります。

それは揮発性の高さから起きる引火です。空気中に揮発したベンゼンは火を近づけると引火して大きく発火してしまいます。ガソリンスタンドでタバコを吸おうとしてライターを使うと大惨事になるのと一緒ですね。

「じゃあ火を使わないように気を付ければいいだけか」というと、実はそうでもないのです。これが一番恐ろしいところで、なんと静電気だけでも引火してしまう可能性があります。

静電気で引火1

特に、ベンジンを燃料とするハクキンカイロは静電気が発生しやすくなる冬場が出番となるため、注意が必要です。

ベンジンの燃料を詰め替えようとしてパチッと引火で大火事に…。ということもあるかもしれないので、作業前には静電気除去をしっかり行いましょう。

※衣類の染み抜きに使用する際にも、生地の擦れなどから静電気が体に溜まりやすいので油断は禁物です。

後書き

生活で非常に役に立つベンジンですが、普段はほとんど使う機会がないために危険性を知らない方も多かったと思います。

何か起きた際には、大きな事故や重篤な症状に繋がることばかりなので、ベンジンを扱う際には十分に注意するようにしましょう。

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